体外受精で保険か自費で迷ったら【Q &Aシリーズ①】

この記事は2023年3月に作成されています。

はじめに

不妊治療を始めて、体外受精までステップアップした方がまず初めに迷う事柄として「保険での体外受精」と「自費での体外受精」でどちらが良いの?があります。2022年4月より高度生殖補助医療の体外受精に保険適用され、はや一年が経ちました。それぞれのメリット、デメリットもあり私見ではあるのですが説明させて頂きます。

保険でのメリット

・費用が自費と比べ圧倒的に安い
・39歳まで6回、40歳〜42歳までで3回移植ができる

保険でのデメリット

・お薬や1周期の診察回数に限りがある
・貯卵が出来ない(しにくい)
・PGT-A不可
・(番外)保険の解釈がクリニックによって違いがある

自費でのメリット

・お薬や診察回数に制限が無く、それぞれに合わせた治療が可能
・希望した検査やオプションなど自由に組み合わせることが出来る
・PGT-Aを併用出来る
・何度も採卵し第二子にも目を見据えた凍結胚の獲得にチャレンジできる

自費でのデメリットト

・1周期あたりの費用が高額で補助がない
・治療の結果(挙児)に自費と保険での違いがあるかはまだ不明確

私の意見

上記以外にもメリット、デメリットはあると思いますが、これくらいにして説明させて頂きます。
私の結論から申しますと、状況にもよりますが、まずは保険での体外受精をするべき。と考えております。
保険のメリットでもある費用が一番の大きな理由です。まず、体外受精をするにあたり、成功(妊娠)に向けて一番大切な要素として「より良い受精卵を何回子宮に戻してあげられるのか」があります。一回あたりの採卵周期の精度を大切に行う自費の方が短期間で結果が出るのでははいか?と考えがちです。しかし、卵巣で育つ卵はそう単純ではありません。周期毎で採取できる卵子には個体差があり、いくら自費治療で精度が高い採卵をしたからといって、必ずしも良い卵子が取れるといった保証はどこにもありません。もちろん採卵精度を高くする事で、卵子へのダメージを減らし良い受精卵になる事もあります。しかし、その保証も無いといったところが生殖医療の難しいところです。保険の採卵周期の場合はどうでしょうか。お薬の制限や診察回数に制限があります。制限の中で行うので、一見すると良い結果が出にくいのでは無いかと考えてしまいます。しかし、保険の最大のメリットは採卵の回数では無く移植の回数で制限がある事です。つまり、39歳まで移植を6回するまでは採卵を保険の中で続けて行くことが出来ます。周期毎で採取出来る卵子には個体差がありますので、卵が凍結出来なければもう一度保険で採卵を続ける事が出来ます。つまり、1回の費用を抑え、周期を変えて採卵に挑戦出来るという事です。少し分かりにくいので、例えてみます。自費は1回の費用が30万〜50万円だけど少し確率の高いガチャを回す。保険は自費よりやや確率は劣るけど、1回5万〜15万円のガチャを回す。といった感じです。(例えが悪くてすみません…)ガチャの当たりは良い卵です。
さらに保険ですと高額医療制度や先進医療の補助(東京都)も使えるので上記費用よりも実質の費用がさらに抑えられます。これは費用を抑える事が目的ではありません。限りある費用の中で不妊治療をどれだけ続けられるのかが一番の目的となります。治療の継続が不妊治療成功の一番のポイントだと考えています。

それでは、自費をおすすめする方はどんな人が当てはまるでしょうか。
・染色体異常による流産が続いてしまって、PGT-Aを希望している
・採卵を繰り返して、受精卵を沢山貯めてから治療がしたい

などがあげられます。
PGT-Aは今のところ先進医療の扱いにはなっていませんね。ですから、PGT-Aを希望する場合は体外受精の治療全てが自費となります。PGT-Aを希望し、自費を選択している方の理由としては、「・流産が続いてしまった。」「・高齢なので異常胚を避けて移植したい。」などがあげられます。また、採卵を繰り返して、受精卵を貯める場合は、「・高齢なので、少しでも若い状態の卵を残しておきたい。」「・病気のため、今のうちに卵を残しておきたい。」「・第二子を考え、若い状態の卵を少しでも残しておきたい。」などがあげられます。キーワードとしては・流産・高齢・病気・第二子です。治療される方、個人の年齢や治療歴、病歴、目標、バックグラウンドなどで状況は変わりますが、自費と保険のどちらを選択するか検討が必要になると思います。

最後に

今後、各クリニックから保険治療での妊娠率と自費治療での妊娠率の違いなどのデータがそろそろ出てくると思います。そのデータで明らかに自費が優位なものであれば、自費をすすめる場合も増えて来るのかな、、と思います。保険での体外受精が始まってまだ1年ですので、今後も業界の動向を注視していこうと思います。

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