はじめに
「鍼灸で妊娠しやすくなる?」「鍼灸と妊娠は関係あるの?」「具体的に何に効くの?」と様々な疑問があると思います。
今回は不妊・妊活に対する東洋医学・鍼灸についてを詳しく解説します。
東洋医学とは
建物に例えると、東洋医学は土台。西洋医学は建築物
建物の外壁にヒビが入ったり、壊れたりしたとします。その部分を修復するのが西洋医学です。しかし、建物の土台部分が脆くなっていたり、ゆがんでいたりすることが原因で建物が壊れているときは、何度、修復をしてもまたヒビが入ってしまいます。この場合は、基礎部分のゆがみや脆さを東洋医学的な治療法で修復し、壊れない建物にする必要があります。
便秘に例えると
便秘がおきた場合、腸の水分を増やし柔らかくして出す薬や腸の動きを活発にして出す薬などで内科的治療をおこないます。ところが、腸自体が弱っていれば、何度、治療を繰り返してもまた便秘はおきてしまいます。しかし、西洋医学には腸自体を強くするという治療の考え方はありません。
一方、東洋医学では「気」「血」という独自の考え方で病気をとらえ、腸の機能を正常化し、腸自体を強くすることを治療の基本と考えています。
西洋医学で化学的な不妊治療をする前に、体の土台を東洋医学で整えましょう、ということね!
その通りです!建物も人間の体も、基礎部分である土台が大切なのです!
「気」とは元気のみなもと
「気」とは目には見えないものです。元来、物の動きなどを「気」と呼んでいました。天気、電気、空気などがそうです。人体についていえば、病気、元気、殺気、気持ち、とあげればキリがありません。このようになにげなく使っている言葉ですが、とても重要な場面で使われていることがわかります。「気」は形は見えないものですが、体の中を巡っています。心臓などの臓器を動かし、血液やリンパを体に巡らせているのも「気」のパワーと東洋医学では考えられています。
「血」とは血液のこと
東洋医学では、色がきれいです鮮血か、赤黒いか、薄いのか、濃いのか、固まっていないか、と血液の質を脈診や腹診で判断します。色がきれいで鮮血が良い状態であるのは、言うまでもありません。
東洋医学で考える不妊
「気」や「血」の流れの乱れから不妊体質へ
現代のストレス社会において「気」や「血」の乱れは必ずあります。つまり、鍼灸・東洋医学はすべての人に効果があると言っても過言ではないのです。東洋医学の五臓六腑である肝、心、肺、脾、腎、胃、小腸、大腸、膀胱、三焦、胆のうち、肺、脾、肝、腎の乱れは妊娠に影響するといわれています。実際に鍼灸の臨床の現場において、不妊の人を観察すると肝、腎の「気」「血」の乱れを起こしている人を多く見かけます。
「腎」と不妊
腎は生殖を司るエネルギーを貯蔵しています。腎の「気」「血」が乱れ生殖を司るエネルギーが不足すると、妊娠できないいろいろな症状として体に表れます。男性のエネルギーと女性のエネルギーが合体して胎児のエネルギーとなり妊娠が成立します。
受精した時点で、胎児のエネルギーの強弱は決まっていて、これが持って生まれる強さとなります。つまり生活環境は一緒でも、人それぞれ個体差が出るのは、生まれながらにしてエネルギーの強弱があったともいえるのです。
腎は生殖能力においてとても大切であり、どんなに若くても、生活環境や食生活で腎のエネルギーが不足してくると、男女ともに生殖能力は衰えます。結果、卵巣機能、子宮機能の低下、無排卵、無月経、子宮内膜の薄さ、着床しにくい、などの症状がでてくるのです。
これまでの生活習慣が悪いと、腎臓のエネルギーが不足して不妊につながるってことかにゃ??
東洋医学では、「腎」は生殖においてとても重要と考えられています。男女ともに、「腎」のエネルギーが充実していることが、妊娠成立には大切なのです。
「肝」と不妊
肝は血を蓄え、体の血量を調整しています。肝は過度の怒るやイライラなどのストレスが起きると、正常な働きができなくなるとされています。「肝」が乱れると血流の流れ、特に、骨盤内の流れが悪くなることにより、冷え性、経血の塊が出現してきます。
女性の場合、子宮内膜を厚くしたり、妊娠に至らなければ剥がれ落ちるというサイクルがあるため、骨盤内に血液を集めなくてはいけません。しかし、月経がスムーズに繰り返されなければ、滞った悪い血が溜まってしまいます。この状態が何年も蓄積すると、頭痛、肩こり、PMS(月経前症候群)、めまい、足の冷えとして表れてきます。さらに重篤な場合は筋腫やガンとなる場合もあるのです。
「子供を産んだら体質が変わった」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。これは、子宮内の悪い血が、出産によって外に排出されたからなのです。
たしかに、子供を産んでから病気をしなくなった、なんて話をたまに聞くわね。
出産と同時に、体から悪い血が排泄されることによって、体質が変わることがあるのですよ。
ARTと鍼灸の併用
より優しく、より効果的な治療には東洋医学での土台つくりが不可欠
例えば、基礎体温の高温期が短かったり、途中で下がってしまい綺麗な2相にならない場合で、病院で治療しても改善ば見られない場合、東洋医学の出番となります。この場合に2つのパターンに原因を分類し鍼灸治療を進めていきます。1つは自然治癒力が足りない場合、もう1つは自律神経の問題による場合です。
自然治癒力は風邪を引いた時に、自ら体温を上げ風邪のウイルスを退治する働きです。自然治癒力が足りない場合、体温が上がらず、なかなかウイルスを退治できない状態になり風邪が治りにくくなります。これと同じような状態で体温を上げることができなくなり、綺麗な2相にならない場合が考えられるのです。
もう1つの自律神経の問題による場合です。自律神経は2つの「働く神経」と「休む神経」で構成されています。「働く神経」とは交感神経、「休む神経」とは副交感神経のことをいいます。この2つのバランスにより、体温調節やホルモン調節を体は自らおこなっているのです。自律神経の変調によりホルモンバランスが引きをこされた場合、排卵機能不全や黄体機能不全を起こすこともあるのです。自律神経の変調をおこす最大の原因はストレスです。過度のストレスは「働く神経」の交感神経の緊張を増大します。それに伴いさまざまな不定愁訴あらわれてくるのです。
体外受精や人工授精をうける時は、鍼灸も一緒にお願いするべきね!1%でも確率は上げたいものね!
移植当日に鍼灸をうけると、確率が向上するといった研究もなされているんですよ。
まとめ
不妊症は病気ではなく、体質です。
人間は皆に必ず妊娠する力があります。しかし、現代のストレス社会や生活環境、食生活での体への負担が積み重なり、1つの体質として妊娠しにくい体になっているのです。しかし、自分の体の状態がどうなっているかを自分自身で把握し、改善していく事はとても困難です。真っ暗闇の道を、明かりもなく目的地まで辿り着けるでしょうか。おそらく、見当違いの方向に進んでしまい目的地には辿り着けないでしょう。東洋医学は、お体を「気」や「血」、「五臓六腑」といった伝統的な表現で体を理解し、お腹や脈、舌から現在のお体の状態を把握し、改善する治療法があります。なかなか、たどり着けない妊娠、出産という目的に一筋の明かりを灯すことで、ゴールへの案内ができると確信しております。もし、妊娠でお悩みでしたら、鍼灸院を頼ってみるのはいかがでしょうか。
※東洋医学に基づく当院の解説であり、妊娠を保証するものではありません。施術の効果には個人差があります。